池田晴男の最近のブログ記事

「シニアのチカラ」連載第1回目は私たちNPO法人「NPOサポートはこだて」の池田晴男理事からのメッセージです。それではどうぞ!

始めよう!「自分らしい生き方」さがし
―大量退職時代を迎えた団塊世代への期待―

NPOサポートはこだて・池田晴男

3年間で700万人。07年から3年の間に退職を迎える、いわゆる団塊世代と呼ばれる人々の数です。団塊の世代とは昭和22、23、24年生まれの世代を指すのですが、団塊世代の大量退職の始まりは「2007年問題」として社会的にも大きな関心を呼び起こしました。

少子高齢化が進む日本の社会は、年功序列や終身雇用制度の崩壊に加え、年金や社会保険などの社会保障制度も土台が揺らぎ始めています。社会を支えてきた既存の価値観や制度が危うくなり始めたことで、将来への夢や希望を持てずにいる若者も増えています。また、人と人のつながりが薄れ、地域自体も疲弊化しています。

日本社会が、これまでの価値観が通用しない状況に立ち至っている下で大量退職時代を迎えているのが団塊の世代ですから、社会問題としてクローズアップされてきたのも当然といえるのかも知れません。

団塊世代は、「仕事人間」として日本の高度経済成長を支えてきました。会社や組織の中心的な役割のみならず、社会の中核的な役割を担ってきた世代でもありました。

これらの人びとにとって、退職で会社や組織を離れるということはこれまでのライフスタイルが根本から変わることでもあります。そのせいか、退職後の「第二の人生」への踏み出しは未知の世界へ足を踏み入れるような相当にストレスのたまることと言われています。

団塊世代は、退職後の「生きがい」を見つけるのがヘタで家に引きこもりがちになる、という統計もうなずけるものがあります。働いているときは、働いているなりの組織があり、会社があり、その限りで、自分が生活するベースがあります。ところが、退職によって、これまでの会社や組織のためにがんばるという生き方から、必然的に個として生きることが求められることになるのですから、迷ったり、方向を見出せなくなったりするのも無理はありません。

会社や組織からの「卒業」は、けして一人の人間としての役割が終わったことではありません。ましてや生きる目標がなくなったり、社会から切り離されることでもなく「自分らしい生き方」の新たな始まりとしてとらえるべきなのです。

■ 組織としての生き方から、自分らしい生き方へ

退職というのは就職や結婚と同じように、人生における重要な「転機」でありますが、人生の後半における「転機」ということもあってか、どうしても消極的、後ろ向きのイメージがつきまとってしまいがちです。

しかし団塊世代にとって退職という「転機」は、若いときとは違った、さまざまな社会経験を十二分に積んだ上での「転機」であり、「自分らしく生きる」ことへの新たなスタートラインに立つことでもあるのです。言い換えるなら、組織の一員としての枠から解き放たれ、これまであまり自由にならなかった時間を持つことであったり、何ものにも縛られない行動の自由を手に入れることでもあろうと思います。

これらは地域をベースグランドとした生き方への転換ということなのです。世界で有数の長寿国となった日本ですから、少々大仰な言い方をすれば、退職後の人生が会社勤めをしていた年月に匹敵するほどの長さになりつつあるといえるのです。

これまでの長い人生の中で培ってきた知識や技能、豊富な経験などは、街づくりや人材育成など地域の活性化にとって大切な資源でもあります。団塊世代の人びとが地域における新たな「現役」として登場してくることは、閉塞感の漂う函館や道南の地域力の底上げにもつながるはずです。

こうして、「退職」後という人生後半の生き方に積極的な意義を見いだしていくことは、その人にとって有意義なだけではなく、地域にとってもおおいに意義のあることなのです。日本が、かつて経験したことのない超高齢化社会に踏み込みつつあるなかで、退職を迎える団塊世代が「第二の現役世代」と位置づけられているのは、このような理由によることが大きいのではないでしょうか。

■ 経験豊富な団塊世代のパワーを「まちのチカラ」へ

地域をベースとした生き方とはどのようなことでしょうか。これまで、それぞれの生活基盤が地域にありながら、実際のところは「地域が見えていなかった」、という声がよく聞かれます。

視ようとしなければ見えてこないのが地域でもあります。地域を見ると言うことは、そこで暮らす人々の生き方にふれるということでもあります。よく言われる「仕事人間」として生きてきた人たちにとって、地域とは何か得体の知れない、漠然としたものであり、取っかかりをつかみずらいものとしてあるようです。

地域にはさまざまな活動をしている人々がたくさんいます。そしてまたそれらの人びとや活動からはさまざまな情報も発信され、地域の市民活動を紹介する情報誌も身近な所にまで配布されています。自分や家族の生活が実は地域のさまざまな人びとのつながりのなかで支えられている、ということにも気づかされたりします。

視点を少しだけ変えれば、地域のなかで生き生きと活動している人々や地域を支えている人々の多様なつながりが見えてくるはずです。地域を「視る」、地域を「知る」ことによって生まれる出会いや交流のなかから、新たな発見や方向性を見出していくことになるかも知れません。それは、団塊世代が地域を活性化させる「新たな現役」へと踏み込んでいく第一歩になるはずです。

「人として生きる」「人らしく生きる」ということは、誰かとつながって生きる、ということでもあります。地域で暮らす人々の出会いや交流、そして支え合いによって生み出される人びとのつながりは、「まちのチカラ」の基礎を成すものであり地域を活性化させるエネルギーということができます。

経験豊富な団塊世代の皆さんは知識や技能だけではなく経験の蓄積という大きなパワーをもっています。団塊世代の地域への“登場”は、人と人のつながりをつくりだし地域を活性化させる大いなる可能性を秘めているのです。

時代は、団塊世代が、あらためて「自分らしい生き方」をさがし始める扉を開いたというべきではないでしょうか。